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| 「羨ましい話、悩ましい話」 |
| 川原直毅(かわはら・なおき) |
仕事柄、いろいろなデータを目にするが、釣りに関する気になる数値があった。それはレジャー白書なのだが、どうやら我が国の釣り人口は1998年に2020万人から2005年に1070万人に激減しているというものだ。確かにいざなぎ景気を越えたと景気観測では言っているが、これまでの景気回復と今回の大きく違う点は所得にそれが殆ど反映していないことだ。昨夏、平戸の玄海フィッシングセンターの女将さんからお中元を贈って頂いた折に世間話をしたが、このところ渡船客が大幅に減少しているという愚痴めいたものだった。そういう私はサンデーアングラーだから週末の土日が楽しくてならないのだが、なかなか毎週釣行しようという仲間もそう居ない。ましてやゴールデンウィークなどに5泊6日やかつてのように年次休暇を使って10連休などはとんでもない話だ。2006年春は石川県能登の美釣会のメンバーと五島列島玉之浦に同行させて頂き4泊5日の楽しいチヌ釣りが出来た。そういえば私の恒例となっていた年末年始の五島・対馬釣行も今ではこの不景気も手伝って誰も声を掛けてくれないし、私から誘うのも何か申し訳ない気がする。簡単に1回の釣行で10万円近く遣える釣り人はそう簡単には居ない。もっとも10万円あればもっと他のことに遣うのが本当かもしれない。金銭感覚、価値観の相違はその人間の育った環境や現在置かれた状況に左右されるから仕方ないのだろう。しかし、一般的に一度高められた生活水準というのは例え所得が下がっても元の水準まで戻ろうとしないのが世の常である。マーケティングの世界では、これをラチェット効果というが、やはり現実は厳しいものだ。この点、趣味の釣りとは自分の我が儘だから自己実現するには多少の無理も厭わないかもしれない。まぁ、釣りそのものを断念しないとならない状況にまで追いやられるのは問題だが。
さて、福岡県の宗像市の玄界灘に浮かぶ筑前大島に海洋釣堀「大島フィッシングパーク」(仮称)という県立観光施設の整備構想が進んでいるらしい(平成17年12月29日付け西日本新聞掲載)。この構想によると、港外に新たに防波堤と既存の防波堤の間に大規模なイケスを造り、ブリなど玄界灘の天然魚を放流して浮き桟橋から釣りを楽しんでもらおうというものだ。この一帯にはフィッシングパークの他、レジャー用ボートを係留する浮き桟橋、体験漁業施設なども設けるという。現在、僅か人口860人足らずの離島に温泉施設などの利用客が年間11万人というからこの数値も驚きだ。これに県立海釣り公園ができればさらにレジャースポットとして年間20万人に増えると期待を膨らませている。離島振興プロジェクトには国の地域再生基盤強化交付金の採択が何よりだが、実に羨ましい話じゃないですか。瀬戸内の島々も大小合わせればおよそ750の島がある。釣りの盛んなのは別に九州だけに限ったことではない。チヌ釣りの最も盛んな地域として瀬戸内では、メーカーはチヌ釣り全国大会を開催しているほどだ。しかし、私が目下、ホームグランドとしている広島近郊の瀬戸内にはこのような海釣り公園は無い。まぁ、"出る杭は打つ"のが好きな県民性もあるらしいから所詮無理な話かもしれない。サンデーアングラーの私としては山口の周防大島が釣り人を歓迎する島として人気スポットになっているのがやや羨ましいかなと思う。平日、休日を問わず老人たちが堤防や波止場でのんびりとアジ子のサビキ釣りをしている光景を見掛ける。最近では親子で釣りを楽しむファミリーフィッシングがめっきり減ったという。ただでさえ、釣り人が減っている状況下でこの現象は悪しきことではないだろうか。オヤジが釣りに夢中になっている姿を子供たちはどのように見ているのだろうか。ここにも寂しい情景が見え隠れする。私は波間に漂う愛用のウキを眺めながらふと物思いにふけった。
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